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小作品ばかりが並んでます。その大部分が多翼祭壇画を分解したパネルです。それも裾絵が多いようです。他の美術館や教会などでパネルが欠落した多翼祭壇画をよく目にします。その欠けたパネルがここにあることが少なくありません。裾絵だけを展示しては然程意味がないので、返却してやれば良いと思うのですが、ヴァティカンは応じないことが多いと思います。
その代表的な例ですが、ペーザロ市立美術館にジョヴァンニ・ベッリーニの「ペーザロの祭壇画」がありますが、その頭頂部の「十字架降下」が欠落しています。その頭頂部がここにあります。(この時は、フォルリのピエロ・デッラ・フランチェスコ展に貸し出されていました)


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Maestro di Barga (ルッカで15世紀前半に活動)の「聖母子と四聖人」(1440)


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Maestro del Crocefisso di Trevi (スポレートで14世紀第2四半世紀に活動)の「キリストの逮捕」(1320‐30)
以下4点も同じ裾絵からです。


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「キリストの鞭打ち」


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「磔刑」


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「キリストの埋葬」


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「キリストの復活」


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ジョヴァンニ・ディ・パオロ(シエナ、1398c‐1482)の「福音書記者聖マッテオ」(1389)
これは作品紹介プレートの明らかな間違いでしょうね。この作品は1389年の制作と書かれてますが、その年にはジョヴァンニは産まれていなかったのですから。


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リッポ・メンミ(シエナ、1317‐1356活動)の「磔刑と聖人たち」(1347c)
リッポは、画家メンモ・ディ・フィリプッチオの息子で父から手ほどきを受け、父の工房で修業しました。リッポの姉がシモーネ・マルティーニの妻でした。その関係で、シモーネから強い影響を受け、シモーネのスタイルを忠実に守り、シモーネの最も忠実な後継者となりました。
ところが、リッポ単独の作品でもシモーネが手を入れたり、時には共同で制作されたものがあったので、作品の帰属を巡って議論が絶えません。


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タッデオ・ディ・バルトロ(シエナ、1362c‐1422c)の「聖母の死」(1410c)


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タッデオ・ディ・バルトロの「聖母の復活」(1410c)


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パオロ・ディ・ジョヴァンニ・フェイ(シエナ、1369‐1411活動)の「磔刑の三翼祭壇画」(1375‐95)
パオロは、アンドレア・ヴァンニの弟子説が有力ですが、アンドレアの協力者だったフランチェスコ・ディ・ヴァッヌッチョと画風が似ていたので、フランチェスコと度々混同されている。
1395年から1410年までシエナ大聖堂の装飾に従事した。その画風は、シモーネ・マルティーニやロレンツェッティ兄弟などの影響を受けた伝統的なシエナ派国際ゴシック様式でした。しかし、フィレンツェで起きたルネサンスへの新しい動きにも影響を受け、シエナ派の伝統に忠実な中で、独自性を発揮して後世のサセッタとジョヴァンニ・ディ・パオロに影響を与えたと言われてます。


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グレゴリオ・ディ・チェッコ・ディ・ルーカ(シエナ、1389‐1423記録)の「聖母の誕生」(1410c)


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サーノ・ディ・ピエトロ(シエナ、1406‐1481)の「エジプトへの逃避」(1450‐55c)


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サーノ・ディ・ピエトロの「ご誕生」
サーノは、15世紀にシエナで活動した画家で、初めジョヴァンニ・ディ・ピエロに師事しましたが、後に師匠をサセッタに変えました。師匠を変更した理由は不明です。
その画風は、サセッタの画風を忠実に受け継ぎ、師匠そっくりでした。サセッタは1450年に死去しますが、サセッタの未完成作品全てを完成させ、サセッタが受注したものの手付かずだった作品も完成させたのですが、それらをサセッタの作品としてサーノが取り扱いました。また、制作年度がはっきりしない作品もあるのですが、サセッタの作品なのか、サーノの作品なのか良く分からないのです。


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サーノ・ディ・ピエトロの「聖母の教会への出現」(1448‐51)


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サーノ・ディ・ピエトロの「聖母の結婚」(1448‐51)


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Maestro del Trittico Brancacci (15世紀中ごろ)の「聖母子と4聖人の三翼祭壇画」(1375‐80c)


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ルーカ・ディ・トンメ(シエナ、1355‐1389記録)の「ラザロの蘇生」(1362以前)


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ジョヴァンニ・ディ・パオロの「死せるキリストへの哀悼」(1440‐50)


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ジョヴァンニ・ディ・パオロの「ゲッセマネ園でのキリストの祈り」(1440‐50)


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ジョヴァンニ・ディ・パオロの「パドヴァの聖アントニオ」(1440‐50)


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フィレンツェの逸名親方の「授乳の聖母と天使たち」(1380c)


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ニッコロ・ディ・トッマーゾ(フィレンツェ、1346‐1376記録)の「聖ブリジーダ」(1372以降)


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ジョヴァンニ・ディ・パオロの「ご誕生」(1440c)


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ジョヴァンニ・ディ・パオロの「受胎告知」(1445)


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ルーカ・ディ・トンメの「磔刑」(1362)


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サセッタ(シエナ、1400c‐1450)の「アクイナスの聖トッマーゾの幻視」


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Maestro dell'Osservanza (シエナで1430年台活動)の「キリストの鞭打ち」(1435‐40)


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リッポ・ダンドレア(15世紀前半活動)の「ご誕生」(1340c)


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ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ工房による「受胎告知」(1425c)


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ロレンツォ・モナコ(シエナ、1370c‐フィレンツェ、1423c)の「聖ベネデットの物語の一場面」(1410‐15)


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ジェンティーレ・ダ・ファブリアーノ(ファブリアーノ、1370c‐ローマ、1427)の「バーリの聖二コラの誕生」(1425)
以下3点の写真も同じ裾絵のバーリの聖二コラの物語です。


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「樽の中の3人を救う聖二コラ」


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「貧しい3人の娘に金の球を与える聖二コラ」


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「難破船を救う聖二コラ」


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サセッタの「ウミルタの聖母」(1435c)


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トゥリーノ・ヴァンニ派画家による「聖マルゲリータとその物語」(1400c)


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オリヴッチオ・ディ・チッカレッロ(アンコーナ、1388‐1439記録)の「植えるものへの食物供与」
以下5点の写真も同じ裾絵からのものです。


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「飲料の供与」


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「衣料の供与」


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「病人への慰問」


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「囚人への慰問」


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「死者の弔い」


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有名な画家の作品でも裾絵断片ばかりでは、カトリックの総本山としては惨めですね。


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フィリッポ・リッピ(フィレンツェ、1406c‐スポレート、1469)の「聖母戴冠と聖人たち」(1444c)


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ベアート・アンジェリコの「バーリの聖二コラの物語の一場面」(1437または1447)


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前の作品と同じ裾絵です。


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マゾリーノ・ダ・パニカーレの「磔刑」


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マゾリーノの「聖母の死」(1428-31)


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プセウド・ドメニコ・ディ・ミケリーノの「マギの礼拝」


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プセウド・ドメニコ・ディ・ミケリーノの「教会博士たちとの問答」と「キリストの変容」


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Scuola Renana(15世紀)の「聖シモーネと聖ジュダの殉教」(1370‐75c)


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Scuola Renanaの「聖バルトロメオの殉教」(1370‐75c)


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プセウド・ドメニコ・ディ・ミケリーノの「ご誕生」


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プセウド・ドメニコ・ディ・ミケリーノの「キリストのエルサレム入城」


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ベアート・アンジェリコ派画家による「玉座の聖母子の三翼祭壇画」(1430c)


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詳細不明


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ルドヴィーコ・ウルバーニ(サン・セヴェリーノ・マルケ、1460‐1493)の「マギの礼拝」(1471c)


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ベノッツォ・ゴッツォリ派画家による「十字架降下」


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ピエトロ・ディ・ジョヴァンニ・ダンブロージョ(シエナ、1410‐1449)の「聖バルトロメオと皇帝」(1435c)


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ピエトロ・ディ・ジョヴァンニ・ダンブロージョの「聖バルトロメオの鞭打ち」(1435c)
(つづく)