写真はアレッツォです。ルカ・シニョレッリの記録を調べていくと、アレッツォでルカ・シニョレッリを見かけたという目撃証言が数度あるのですが、見かけた場所が記されている場合があるものの、何故そこに居たのかなどの目的の記述がありません。
55.リヴァプール ウォーカー美術館 Liverpool Walker Art Gallery

リヴァプールのウォーカー美術館です。

銀行家で美術収集家でもあったウィリアム・ロスコーが銀行破綻してしまい、1819年にリヴァプール王立協会がロスコーのコレクションを買い取ったのが美術館の起源とされてます。
1877年、美術館が開館しましたが、リヴァプール元市長で美術開館を強力に推進したアンドリュー・バークレイ・ウォーカー卿に因んでウォーカー美術館と命名されたそうです。
ルカ・シニョレッリの作品が1点ありますが、少し問題があるようで常設展示されてません。

ルカ・シニョレッリの「聖母子」
長い間展示されていないので、白黒写真しかありません。
この作品と全く同じと思われる作品が、ニューヨークのメトロポリタン美術館にあります。ニューヨークの作品がルカ・シニョレッリの真筆であることは確かですが、当美術館のそれはシニョレッリ工房作、工房のフランチェスコ・シニョレッリの作品、或いはコピー作品とされることがあるので、非常設展示となっているのかも知れません。

ご参考までにニューヨークのメトロポリタン美術館蔵のルカ・シニョレッリの「バチェの聖母」の作品画像を載せておきます。
56.ロンドン ナショナルギャラリー①

必訪のナショナルギャラリーです。

国家を代表する美術館の展示作品の質と量は、国の繁栄に比例します。大英帝国の美術館ですから、傑作が数多くあります。
例によってカラヴァッジョの作品です。

カラヴァッジョの「トカゲに嚙まれた少年」

カラヴァッジョの「エマオの晩餐」
さて、ルカ・シニョレッリの作品です。ロンドンのナショナルギャラリーに9点のルカ・シニョレッリの作品があります。

ルカ・シニョレッリの「羊飼いの礼拝」(1496)

ルカ・シニョレッリの祭壇画は裾絵付きが普通でした。「羊飼いの礼拝」にも裾絵があった可能性が高いのですが、今のところ適当な裾絵が見つかっていないようです。




「羊飼いの礼拝」は、チッタ・ディ・カステッロのサン・フランチェスコ教会にありました。

チッタ・ディ・カステッロのサン・フランチェスコ教会のファサード

サン・フランチェスコ教会の内部
「羊飼いの礼拝」は右側壁第二礼拝堂の主祭壇画でした。

サン・フランチェスコ教会の碑文
チッタ・ディ・カステッロのサン・フランチェスコ教会は傑作祭壇画の宝庫でしたが、この碑文にラファエッロの作品があったことが記されてます。

碑文に記されている作品ですが、ラファエッロの「聖母の結婚」(ミラノ、ブレラ絵画館蔵)になります。
さて、「羊飼いの礼拝」ですが、18世紀中頃にサン・フランチェスコ教会右第二礼拝堂から取り外され、チッタ・ディ・カステッロの有力貴族マンチーニ家の所有となりました。

写真右奥の建物がチッタ・ディ・カステッロのPalazzo Mancini Bondiで、マンチーニ家の邸宅でした。

「羊飼いの礼拝」はナポレオンのイタリア侵攻時にPalazzo Mancini Bondiにありましたが、フランス軍の接収から免れました。19世紀後半、マンチーニ家は窮乏し、邸宅にあった美術品が売りに出されました。
1876年、「羊飼いの礼拝」は、フィレンツェの美術収集家ステファノ・バルディーニ(ピエーヴェ・サント・ステファノ、1836‐フィレンツェ、1922)によって買い取られました。余談になりますが、ステファノの膨大な収集物が展示されているのがフィレンツェのバルディーニ美術館です。
1882年、ナショナルギャラリーが本作品を1200ポンドでバルディーニから買いました。

次の作品です。

ルカ・シニョレッリの「梯子の男」
一見してキリストの磔刑に関係ありそうですが、「梯子の男」だけを単独で描くのはほぼあり得ないでしょう。この作品は大きな祭壇画の断片なのです。
その祭壇画というのは、マテーリカ(マルケ州マチェラータ県にあるコムーネ)のサンタゴスティーノ教会にあった主祭壇画のことです。

マテーリカのサンタゴスティーノ教会です。

サンタゴスティーノ教会のファサード
ルカ・シニョレッリの祭壇画については、制作契約、制作費支払い記録が残されており、それらによれば、1504年5月から1505年9月の間に制作され、完成後直ぐに主祭壇に設置されました。
1789年、マルケ州を襲った大地震によって、教会の建物は崩落し、現在の姿に再建されましたが、ルカの主祭壇画も大きな被害を受けました。
ルカの主祭壇画の状態の良い部分が切り取られ、断片毎に売却されました。13断片あったそうです。
現存が確認されているパネルは13断片のうち6断片で、そのうち3断片が美術館で一般公開されています。残りの3断片はいずれも個人蔵で、通常見ることが出来ません。

マテーリカの祭壇画の想像図

ワシントンDCのナショナルギャラリー蔵の断片

ボローニャ市立美術館蔵の断片

ボローニャ市立美術館の作品説明板

(つづく)
